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2008年7月1日

G8メンバー国内にある代表的な研究・教育機関である27大学の、総長、学長、塾長および代表者ら は、大学や科学者に期待される役割の拡大を重大に受け止め、2008年7月に日本国北海道の洞爺湖において開催されるG8首脳会議の直前の6月29日から7月1日に、同じ北海道の札幌で開催した「G8大学サミット」に集結し、サステイナビリティの実現のために大学が果たすべき責務とそれらを達成するための具体的な取組みについて議論した。また、会議には、G8メンバー国以外の主要国から6カ国の8大学及び国連大学が招待された。
G8大学サミットに出席した全大学の学長は、世界のすべての大学が本宣言に賛同し、それぞれの国や地域の状況に配慮しつつ、適切な行動に移すことを期待する。
我々、G8大学サミットに出席した全大学の学長は、サステイナビリティ実現に向けた地球規模での取組みにおける大学の役割ととるべき行動に関して、以下の認識を共有した。
人間、社会、グローバルレベルでの持続可能性(サステイナビリティ)の考え方は21世紀における最も重要な概念の一つである。過去の一連の会議や宣言文は、今後のサステイナビリティに向けての重要な指針となる(参考資料参照)。一方で、今日では科学と政策との距離が著しく縮まってきている。
かつては科学の問題とされてきた気候変動を含むサステイナビリティにかかわる問題は、今や最大の政治課題となっている。貧困撲滅や開発問題のような喫緊の社会問題に加え、気候変動は、人間、社会、そして地球のサステイナビリティに多岐にわたる影響を及ぼす。今日、我々人類が喫緊の直面する地球環境の問題は、これまで人類の歴史の中で遭遇し乗り越えてきたどの問題よりも、複雑で広範にわたり、大きな不確実性を伴っている。しかも、我々に与えられている時間は多くない。
すべての大学は、次世代に持続可能な地球と社会を残すため、問題解決に重要な役割を担っており、そのために、研究を通じ、時宜にかなった解決策を提示していくことが期待される。また、これら解決策が、適時適切に政策として結実するためには、政策決定者と研究者がより密接に連携することが求められている。しかしながら、より重要なのは、この大学が果たすべき役割そのものが変わりつつある点である。大学は、中立かつ客観的な存在として、持続可能な社会の形成に向けて政治と社会を啓発していくのにもっともふさわしい存在である。
さらに、持続可能な社会を形成に向けたこうした解決策を現実的かつ的確なものとするためには、大学は、市民や企業など幅広いステークホルダーとも協力していくことが重要である。そして、大学はこの目的に向けて、サステイナビリティに関する研究や政策分析の分野で協働していかなければならない。しかし同時に、大学の強みでもある学問的な客観性を犠牲にしてはならない。G8メンバー国における先端的研究を担う大学には、かかる大学の責任を果たすため、特にリーダーシップを発揮していくことが求められる。
サステイナビリティの領域は広範であり、自然環境や社会経済システムにかかわる多様な問題が複雑に絡み合っている。サステイナビリティの実現には、環境問題の解決という視点だけでなく経済・社会問題も含めた総体的な問題解決のアプローチが必要である。
G8サミットや国連を始めとする国際機関においても、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会の構築などサステイナビリティをとらえた多様なイニシアティブが展開されている。しかしながら、持続可能な社会の形成に向けた総合的なビジョンを形成するためには、過去の細分化された研究分野を再構築した新たな科学的知識が必要であり、また、学際的研究を推し進め、統合的なアプローチによって問題を解決することが求められている。
このように新しい科学的知識体系を構築するには、既存の研究学術分野を超えて、総合的に問題を解決することのできる統合的な枠組みが必要である。こうした観点から、これまで特定の課題毎に構成されてきている既存のさまざまな研究ネットワークを、各々の実績・強みを活かした相互補完的な包括的連携ネットワーク(Network of networks; NNs)として統合化していくことが必要と考えられる。
この包括的連携ネットワークを通じて、異なる地域にあるさまざまな大学間での、学生、教職員の交流や共同研究など、さまざまなレベルでの実効性ある学際的協力をすすめることが可能となる。
サステイナビリティの実現には、市民の意識改革を含めた社会改革が伴う。大学とそれに属する研究者は、サステイナビリティに関係する新たな科学的知識と情報を、その不確実性も踏まえつつ正しく明確に発信する責務を有する。
科学者と、市民や政策決定者など他のステークホルダーとの対話を通じて、新たな科学的知識は、社会変革を促し、適切な政策の展開を助長する触媒となりうる。一方で、このような対話により、知識そのものの改革もさらに進み、社会がサステイナビリティの実現に向けて変革していくことを後押しする。このような社会と知識が相互影響し変革していくダイナミックな現象、すなわちナレッジイノベーション(knowledge innovation)を推進していくことが、サステイナビリティの達成には重要である。
将来世代の教育およびサステイナビリティについての啓発という意味で大学の担う役割は大きい。とくに問題をグローバルに俯瞰的に見つつ、国や地域の特有の問題を解決する能力を持つリーダー育成の必要性は高い。とりわけ、グローバルな問題の影響をより大きく受ける途上国のサステイナビリティを確保するためには途上国の人的資源の開発が不可欠である。大学は、包括的連携ネットワークに参加し相互協力することにより、それぞれの国や地域での高等教育を質的量的に発展させ向上させることができる。
サステイナビリティの実現において大学が果たし得るもうひとつの役割は、大学の研究教育プロセスを通じて社会のさまざまなステークホルダーとの交流を行い、サステイナブルな社会の新しいモデルとして自らのキャンパスを活用していくことにある。
大学は、自らが持つサステイナビリティに関連する先端知識を社会と一体になって実験する場としてのキャンパスを有している。かかる意味において、いくつかの参加大学が実施している「サステイナブル」キャンパスあるいは「グリーン」キャンパスや、気候変動対策のための行動声明などは、まさにサステイナビリティを目指す社会のモデルとなる。
大学を社会の実験の場にすることは、将来の社会のサステイナビリティを担っていく学生たちに必要なスキルや行動様式を育むという点においても重要である。換言すれば、キャンパスは実験の場であると同時に教育の理想的な教材であり、大学はサステイナブル・キャンパス等の活動を通して次世代の社会づくりに貢献することができる。
G8大学サミットに集まった参加大学は、いずれも世界各地域の代表的存在である。その大学が地域の経済、社会、文化的事情を踏まえてそれぞれに作り出すモデルの集積は、多様性を包含するグローバルモデルの構築につながる。
以上共有された認識を踏まえ、G8大学サミットに出席した全大学の学長たちは、以下のとおり約束する。
この機会に、とりわけ気候変動を含む喫緊の地球規模の問題への討議に関し、我々(G8大学サミットに出席したG8メンバー国の大学学長)は、G8首脳に対し、サステイナビリティに関する研究と教育に携わる大学人として、以下のとおり要請する。国連大学およびG8メンバー国以外の大学の出席学長はこれを支持する。
以上
我々学長は、サステイナビリティ実現に向けて大学が果たすべき重要な役割を認識し、本宣言文に記された大学のコミットメントを確認し、G8首脳と国際社会に対しとるべき行動を提案し、働きかけることをここに宣言する。
(以下、G8メンバー国大学学長による署名)
| (signed) | (signed) |
| Stephen J. Toope, President and Vice-Chancellor The University of British Columbia | Indira V. Samarasekera President and Vice-Chancellor University of Alberta |
| (signed) | (signed) |
| Xavier Michel, President Ecole Polytechnique | Georges Molinié, President Université Paris-Sorbonne (Paris IV) |
| (signed) | (signed) |
| Bernd Huber, President LMU Munich | Burkhard Rauhut, Rector RWTH Aachen University |
| (signed) | (signed) |
| Francesco Profumo, Rector Politecnico di Torino | Guido Chelazzi, Vice-Rector Università degli Studi di Firenze |
| (signed) | (signed) |
| Eiji Hatta, President Doshisha University | Takehiko Sugiyama, President Hitotsubashi University |
| (signed) | (signed) |
| Hiroshi Saeki, President Hokkaido University | Yuichiro Anzai, President Keio University |
| (signed) | (signed) |
| Kazuo Oike, President Kyoto University | Tisato Kajiyama, President Kyushu University |
| (signed) | (signed) |
| Shin-ichi Hirano, President Nagoya University | Kiyokazu Washida, President Osaka University |
| (signed) | (signed) |
| Kiyofumi Kawaguchi, President Ritsumeikan University | Hiroshi Komiyama, President The University of Tokyo |
| (signed) | (signed) |
| Akihisa Inoue, President Tohoku University | Kenichi Iga, President Tokyo Institute of Technology |
| (signed) | (signed) |
| Jun-ichi Nishizawa, President Tokyo Metropolitan University | Katsuhiko Shirai, President Waseda University |
| (signed) | |
| Vladimir Kurilov, President Far Eastern National University | |
| (signed) | (signed) |
| Mary Ritter, Pro-Rector Imperial College London | Peter Guthrie, Director, Centre of Engineering for Sustainable Development The University of Cambridge |
| (signed) | (signed) |
| Gene D. Block, Chancellor University of California, Los Angeles | Donald Filer Director, the Office of International Affairs Yale University |
我々学長は、サステイナビリティ実現に向けて大学が果たすべき重要な役割を認識し、本宣言文に記された大学のコミットメントを確認し、G8メンバー国の大学によるG8首脳と国際社会への提案をここに支持する。
(以下、G8メンバー国以外の主要国から6カ国の7大学及び国連大学の学長による署名)
| (signed) | (signed) |
| Ian Chubb, Vice-Chancellor and President The Australian National University | Carlos Clemente Cerri, Professor Center of Nuclear Energy in Agriculture University of São Paulo |
| (signed) | (signed) |
| Jianhua Lin Executive Vice-President and Provost Peking University | Weihe Xie, Vice President Tsinghua University, Beijing |
| (signed) | (signed) |
| Kripa Shanker, Deputy Director Indian Institute of Technology, Kanpur | Jang-Moo Lee, President Seoul National University |
| (signed) | (signed) |
| Ihron L Rensburg Vice-Chancellor and Principal University of Johannesburg | Konrad Osterwalder, Rector United Nations University |
人間、社会、グローバルレベルでの持続可能性(サステイナビリティ)の考え方は21世紀における最も重要な概念の一つである。この考え方は、1987年の環境と開発に関する世界委員会(WCED)の報告書「Our Common Future(邦題「我ら共有の未来」)」の中で、今後の国際社会にとって中心的な指針となる考え方として「持続可能な開発」という言葉が取り上げられて以来、
など一連の首脳レベルの国際会議を通じてその達成に向けた真剣かつ幅広い議論が行われてきた。
とりわけ、研究と教育の重要性については1990年の「持続可能な未来のための大学学長会議タロワール宣言」が先駈けとなり、「アジェンダ21」第36章(教育、意識啓発及び訓練の推進)に持続可能な開発の実現における大学の役割が指摘された。
その後、持続可能な開発と大学の役割に関しては数多くの会議で議論され、世界各国の大学学長らが地球環境や人類を脅かす喫緊の問題の解決に大学が寄与していくとコミットしてきた。これらには、たとえば、1993年「持続可能な開発に関する京都宣言」(国際大学協会 (IAU))、2001年の「リューネブルグ宣言」(持続可能なパートナーシップのための世界高等教育(GHESP))、2002年の国連大学等による「持続可能な開発のための教育、科学および技術についてのウブント宣言」などがある。また、2002年には、国連総会において2005年から2014年の計画として「国連持続可能な開発のための教育の10年(DESD)」が決議された。
また2006年に開催されたロシアのサンクトペテルブルグにおける主要国(G8)首脳会議では、創造性豊かな人材の育成のための取組みなど革新(innovation)を生み出す社会の実現に向けた具体的方策の必要性が強調された。
これら過去の会議や宣言文は、今後のサステイナビリティに向けての重要な指針となる。一方で、今日では科学と政策との距離が著しく縮まってきている。2007年にドイツのハイリゲンダムで行われたG8首脳会議では、気候変動問題について各国首脳が早期かつ強固な行動に出ることをコミットした。
このことは、かつては科学の問題とされてきた気候変動の問題が、今や最大の政治課題となったことを示している。気候変動は、人間、社会、そして地球に多岐にわたる影響を及ぼす。今日、我々人類が喫緊の課題として直面する地球環境の問題は、これまで人類の歴史の中で遭遇し乗り越えてきたどの問題よりも、複雑で広範にわたり、大きな不確実性を伴っている。しかも、我々に与えられている時間は多くない。
問題の把握と解決方法の模索には、従来以上に科学の果たすべき役割が重要となっていることは「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の例からも明らかである。そしてこのことは、研究機関や大学には、サステイナビリティのための教育はもとより、的確かつ効果的な政策を打ち出すための科学的知識を提供することが求められていることを意味している。
注:正本は英語版とする。